そして彼女には3人の弟子がいた。
遅刻の朝日奈さん、起こしなさいよの鏡さん、踏んじゃだめの清川さん。
毎日放課後になると、体育館裏の秘密特訓場でサンドバックに体当たりする鍛練の毎日であった。
よけられる。当たり屋にとってそれは敗北を意味するものであった。
潜水艦乗りが浮上勧告を受け入れるのと同じくらい雪辱的なことだ。
舘林さんが立ち上がり、背景に炎が燃え上がる。
「コノウラミハラサデオクベキカ。」
裏がバラの模様のマントをひるがえし、再び主人公探しを開始した。
清川さんは置き去りだ。
1年教室、2年教室と探し廻る。そして特別教室棟の廊下の途中に主人公の姿はあった。
窓の外を見てポケットに手を入れ口笛をふきながら不用心に歩いている。
すぐさま突進する舘林さん。速い。免許皆伝は伊達じゃない、まるでシャアのようだ。
足音も立てず、気配も漏らさず、音速で主人公に急接近する。
しかし、接触直前、決め台詞を言おうとしたその瞬間だった。
「ごめーん、まっ・・」
主人公の体がひるがえったかと思うと、突進する彼女の腕をつかみ、
その勢いを止めないように半回転させながら足を掛ける。
空中に飛び上がる彼女の体。視界が縦回りし天井が見えると同時に背中に大きな衝撃が走る。
・・・沈黙。
とたん、主人公の顔に何かがぶつかり弾け飛んだ。
おそらくは10センチくらいの黄色いもの。勢いで主人公の体が反り返り倒れる。
続いてもう一つ飛んで来て、主人公にぶつかる。
今度は氷の固まりのようで、ぶつかった所付近が水がかけられたように濡れていた。
一体何が起こったのか。
「当たり屋さんも、こうなってはかたなしですねえ。」
ふと横を見るとテニスルックな紫髪のおさげの娘が立っていた。
意識がもうろうとしているせいだろうか、おさげの娘の語りがやたらとスローテンポに聞こえる。
「これからは遠隔攻撃の時代ですよね、先輩。」
もう一人、茶髪のポニーテールの娘が現れた。
当たり屋としての敗北、突然のライバル出現。
物語が風雲急を告げ始めていると感じる舘林さんであったが、どんどん意識が薄らいでゆく。
やがて彼女は気を失った。
・・・・当たり屋として復活できるのか?舘林さんとの恋のゆくえは?乞うご期待!!