5

 人が何かをする時、大抵の場合理由がある。
 でも、ないときはない。
 兵士がゆっくりと、壁に寄り掛かりずるずると、地面に横たわり寝息を立てはじめたのにも理由がある。
 かすかに鈍く輝く針。
 それが理由。
 ごくごく単純な理由。
 彼女が兵士を眠らした理由がある。
 とりあえず、邪魔だから。
 この奥へと進む障害となるから。
 彼女は足取りも軽く歩き出した。
 ついでに、針も回収。
 理由は簡単、針を見つけられたくないからだ。
 彼女は奥へと進む。
 奥へと進む。
 何故進むのか?
 それは、シャトルが欲しいから。
 何故欲しいのか?
 それは降りたいから。
 そう、ラグオルに……。
 何故ラグオルに、イレギュラーな真似をしてまで、降りねばまらないのか?
 それは、『ナニカオモシロイコト』が、待っているから。
 理由は単純。
 ごく単純。
 彼女はゆっくりと確実に、だれに見咎められることなく、確実にそこを目指す。
 そことは、シャトルの格納庫。
 目的のものがある場所。
 「ドアが開けっ放し?」
 そう、シャトルの格納庫への入り口は、開けっ放しだった。
 「不用心?」
 彼女の疑問に答えるものはない。
 まあ、いてもらっても困るのだが。
 彼女は足音を忍ばせ、ドアからこっそりのぞく。
 その格納庫の中には、2機のシャトルがあるはず。
 だが……。
 「あれ?」
 だが、シャトルは1機のみだった。
 理由は不明。
 そして、のこったシャトルの傍らに、軍人らしからぬ少女が一人立っていた。
 理由は不明。
 「さてと、こいつを頂戴すれば、ラグオルにおりれるってわけね、うんうん」
 能天気な少女の言葉。
 とりあえず、目的は同じのようだった。 


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